コラム
COLUMN in a monthly

ビジネスに活かす
メンタルトレーニング

本稿は自動車雑誌連載記事です。

第33回 ヨーガに学ぶメンタルトレーニング2

 念願かなって佐保田鶴治先生(大阪大学名誉教授)にお目にかかることができた私は、先生からたくさんの貴重なお話をうかがうことができました。中でも人間の健康や病気について話してくださったことを、今でもよく覚えています。
 お話を始めてしばらくすると、佐保田先生から「あんた、なんで人間が風邪ひくか分かるかな」と問いかけられました。そこで私は「風邪の原因というのは、お医者さんでも本当にはまだ分かっていないそうですから、いろいろあるんじゃないでしょうか…」と、生意気にも答えてしまったのです。
 すると先生は、「それは間違いじゃない。でももっと簡単に考えたらどうだろうか。われわれ人間は自然治癒力を持っていて、それが正常に働いてくれればそんなに病気にならないだろうし、仮に病気にかかったとしても、ひどくならずに治っていくもんなんだよ。別の言い方をすれば、免疫力と言ってもいいんだがね。この力のあるなしが、健康かどうかの決め手じゃあないのかなあ」と話してくださいました。さらに先生は次のようにおっしゃったのです。

 「たとえば毎年冬になると猛威をふるうインフルエンザだがねえ、流行っているときには、インフルエンザのウイルスは、仕事場や街中などいたるところに舞っているわけだ。それなのにインフルエンザにかかる人間と、かからない人間がいるだろう。それは、その時点でその人が持っている免疫力の差だと思ったほうが良い。どの病気かてそうや。同じように生活している人でも、癌になる人もおればならん人もおる。
 もちろん病気になるならんには複雑な原因があるやろうが、一番大切なのは、その人が病気に対する抵抗力を持っているか。つまり免疫性というか、自然治癒力というか、まあ東洋ではこれを自然良能と言うて、昔から大切にしとったんやが、それを人間がどれだけ持っとるかということなんや。私はヨーガというのは、この自然治癒力を高める働きを持っていると思うとるんや。
 ところで、あんた、エイズという恐ろしい病気のことを聞いたことがあるやろ。あれは後天性免疫不全症候群というて、われわれ人間の身体を病気から守ってくれとる大切な免疫性を、根こそぎ奪ってしまうという恐ろしい病気や。私はなあ、ヨーガには、このエイズとまったく正反対の働き、つまり人間が本来持っとるはずなのに、現代人がだんだんなくしつつある自然治癒力を、活性化する働きがあるんではないかと思うとるんや」

 先生のお話をうかがって、私はびっくりしてしまいました。現在では、わが国でもエイズについて知らない人はいないほど深刻な問題となっています。しかし私が先生と初めてお話しした1985年当時の日本では、エイズに関してはまだ対岸の火事といった感じが一般的だったからです。86歳という高齢にも関わらず、理路整然と、やさしく説いてくださる先生のお話を聞き、西洋的な身体観や健康観がすべてだと信じてきた、それまでの不勉強な自分を深く反省しました。眼からウロコが落ちる思いとはこういうことを言うのでしょう。この感動的な日を境として、私のヨーガ修行がスタートしたのです。

コラム一覧

連載「ビジネスに活かすメンタルトレーニング」
  • 講演録・イベントレポート
  • PAGE TOP

    c2013 Yutaka SHIRAISHI